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NPO法人おどろ木ネットワークは、森と木の文化見直し、ものづくりや手仕事の知恵と創造力をもって、
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      ■建具の性能を調べる    


省エネルギーで快適な住宅が求められております。高断熱・高気密住宅を考える上で最も大切なのが窓やドア等の住宅開口部の性能です。東北・北海道等の寒冷地では、特に高レベルな住宅性能が要求されます。一般住宅の住宅開口部において求められる性能は、断熱・気密性、耐風圧性、防火性、遮音性であり、水密性、開閉力、鉛直載荷性、耐衝撃性を求められるものもあります。



○建具の断熱性能

 住宅全体の断熱性能はで表します。Q値は、「総熱損失係数と呼ばれ、
住宅を構成する、壁や床などの各部位から逃げる熱量の合計を住宅の総床面積で除した値で、室内外1℃差の時に建物全体から逃げる熱量(w/uk)で計算されます。Q値は、住宅の各部位の断熱性能であるU値(熱貫流率 w/uk)から、以下の式で導かれます。

熱損失係数= {[各部位の熱損失量の合計] + [換気の熱損失量]} / [延床面積]

自社のサッシやドアの断熱性能について試験してもらいたいという方は、(財)日本建築総合試験場や建材試験センターに依頼すれば、右のような JIS A4710:2004 建具の断熱性試験を実施してくれます。もちろんお金は掛かります。



U値の計算方法について

 U値(平成21年4月1日以降K値からU値に改正)は、部位の熱貫流率と呼ばれ、窓やドア等の建築部位の単位面積当たり(m2)の熱の通りやすさを表したものです。

             熱抵抗値=厚さ÷熱伝導率
             U値(熱貫流率)=1 ÷熱抵抗値

 窓は住宅の中で、最も熱が逃げやすい部位です。18mm厚のペアガラスの熱貫流率は2.9w/uk、これに木製フレームが付けばU値が2.6w/ukになります。

ペアガラスのU値 
要 素  熱伝導率   厚さ(mm)  熱抵抗値(m2・K/W)  
    
室内側熱伝達抵抗 0.11 
フロートペアガラス FL3+A12+FL3  0.194
室外側熱伝達抵抗値 0.04  
熱抵抗値合計   0.344
U値(熱貫流率) 2.9
木製サッシのU値   
要 素  熱伝導率 厚さ(mm)  熱抵抗値(m2・K/W)  
      
室内側熱伝達抵抗 0.11 
木製枠  (面積比36%) 0.15 48 0.32  0.112
フロートペアガラス    (面積比64%) 0.194  0.126
室外側熱伝達抵抗値 0.04   
熱抵抗値合計   0.388
U値(熱貫流率) 2.6

ちなみに、下記のようなフラッシュ構造で玄関ドアを造った場合のU値は0.76w/uk。

フラッシュパネル構造のU値   
要 素  熱伝導率   厚さ(mm)  熱抵抗値(m2・K/W)        
室内側熱伝達抵抗値 0.11
合板 0.15 12 0.08
発泡スチロール  0.03  30 1.0
合板  0.15  12 0.08
室外側熱伝達抵抗値 0.04 
熱抵抗値合計   1.31
U値(熱)貫流率 0.76 

※正確に計算するには中芯材も加えて計算する。

独り言・・・・

 
 曖昧であった住宅の断熱性能であったが、このように数値で示されることはユーザーにとって、家の断熱性能というものが理解し易くなったといえます。しかし、出来た物の評価が見えてきません。サーモカメラ等で簡易に評価する方法もあるようです。また、日本の伝統である引き違い戸が気密性に劣るという評価はいかがなものか。企業の中には、ドイツの金具等を併用して引き違い戸の気密性を向上させているところもあるそうです。もっときめ細かな設計・評価システムの実現を心から望みます。


○建具の.気密性試験


平成12年、JIS A 1516の建具の気密性試験方法に準じ試験機を自作し、「引き違い玄関ドア」の気密性試験を行いました。建具の室内・室外に圧力差を生じるようにしたもので、圧力差(横軸)ごとの通気量m3/h・m2(縦軸)を測定し、両対数グラフ(通気量線図)で表わしました。(JIS A 4702による4段階の等級で評価)




A:試験体  B:圧力箱  C:圧力調整機付き送風機  D:整流板  E:圧力差測定器  
F:風速計  G:窓

 送風機の出力を徐々に上げていくと圧力差測定器の指示針も少しずつ上がりましたが、250Paに近くなると圧力箱内の圧力は上がらなくなりました。この原因は試験箱を構成する合板の通気性でした。興味がお有りの方は試験箱の気密を保持できる材料を用いて、ぜひお試しください。ちなみに本試験の結果は、A-3〔8等級〕でした。


○建具の遮音性試験

 遮音性とは隣室から室内に侵入する音、室内から隣室へ漏れる音をどれくらい遮ることができるかを表す性能です。音源室と受音室の間に試験体を設置し、これに音源を放射して音源室の音圧レベルならびに受音室の音圧レベルを測定し、差し引いた値です。音源は測定周波数 100Hz5000Hz までの周波数帯域または、広帯域ノイズを使います。 このような遮音性試験を簡易に行う方法について紹介します。

遮音性試験のJIS規格

規格の番号

規格の名称

対象

等級

主な内容

JIS A 1416 

実験室における建築部材の空気音遮断性能

建築部材

D

壁等の空気音の遮音を表す数値
コンクリート壁
150mmD-50
木造住宅の壁    :
D-30〜D-40

JIS A 1417 

建築物の空気音遮断性能の測定方法(現場

建物

JIS A 1418 

重量床衝撃音遮断性能

L

上階の衝撃音が下階で聞える大きさを示す数値

JIS A 1520 

建具の遮音試験方法

建具

T

住宅開口部の空気音の遮音を表す数値で、T‐1からT‐4まで4つの等級に分類され、数値が大きいほど遮音性能が優れる。

JIS A 4702 

サッシ

サッシ

JIS A 4706 

ドアセット 

ドア



簡易遮音性試験機による建具の遮音性試験

 この方法は、新潟大学の岩瀬昭雄先生からご教授頂いたものです。だだ、先生から見れば、出来の悪い実験とお叱りを受けるかもしれませんがご容赦ください。
零細な建具屋が自社製品の遮音性能を測ってみたいと考えた場合、公的機関で数十万の試験費用をかける前に、このような試験方法があれば助かるのです。有り難いことに、パソコンが身近にあり、以前は高価なFFTアナライザーがパソコンソフトとして安価に購入できます。マイクもスピーカーも高性能です。これらを使い、下図のような構成による簡易な遮音性試験機をつくってみました。



 無響箱(受音室)   スチレンボードを入れた54mm厚のパネルで箱をつくり、その内部を300mmの吸音材で覆った。内部空間に置く受音マイクへの反射音を防ぐためです。 
 マイクロホン   1個300円の小型マイクロホンを受音側と音源側に使います。 
 オーディオインターフェース   音をデジタルデータに変換します。3万円程度 
 スピーカー   アンプスピーカー(ヤマハ製) 。騒音計で90デシベル程度の強度で、ホワイトノイズを試験体に放射します。3万円程度
 パソコン   オーディオインターフェイスからの音源側マイクと受音側マイクからのデータを取り込み、FFTアナライザーソフトでリアルタイムで記録します。 
サウンドモニターFFTWAVE ソフト   ネットで千円で購入出来ます。 


試験風景

結果
12oスギ合板+遮音シート+25oポリスチレンボード+12oスギ縁甲板からなる、4層の52o複合パネルを試験した結果を下図に示しました。上の紫色の折れ線がその音響透過損失(dB)です。その下の折れ線は、一層、2層、3層の音響透過損失(dB)です。当然ですが多層構造で厚さを増すほど遮音性能が高くなっております。この結果をT値による遮音性評価に当てはめてみるとT−2等級相当という結果となりました。
 遮音性能には質量則というものがあって、それは面密度(Kg/m2)が大きいほど、つまり重い素材ほど音のエネルギーを抑え、防音に有効になります。また、コンシデンス効果という現象があります。ある周波数が材料の屈曲振動と一致して共振状態を起こすというものです。
 新潟大学の岩瀬先生は、二重ガラスのコンシデンス効果について興味深い知見を述べておられます。